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弓道にはさまざまな流派が存在するが、その中でも歴史が深く、実戦的な射法を受け継いできたのが日置流である。日置流は、戦場での実用性を重視した射法を特徴とし、矢勢を最大限に引き出すことを目的としている。この流派では、正確な射を実現するために「足踏みの重要性と三つの準」をはじめ、「胴づくりの基本と姿勢の安定」、「弓構えと狙いを定める方法」など、細部にわたる技術が体系化されている。
特に、「日置流の斜面打ち起こしとは」として知られる独自の打ち起こし方法を採用し、素早く弓を構えることで実戦的な射を実現している。さらに、「引き分けの技術と安定した動作」によって、射の安定性を高め、「会と離れの関係と理想の形」を意識することで、的中率の向上を図っている。こうした日置流の技術は、単なる弓術にとどまらず、現代弓道にも大きな影響を与えている。
本記事では、「日置流と小笠原流の違いとは」をはじめ、「日置流の特徴と実戦的な射法」、「打ち起こしのやり方とポイント」など、弓道 日置流の技術や理念について詳しく解説していく。さらに、「日置流の射の理念と考え方」や「的中率を高めるための工夫」を学ぶことで、より実践的な弓道の理解を深めることができるだろう。伝統と実戦を兼ね備えた日置流の射法を知り、現代弓道における技術向上のヒントを探っていこう。
記事のポイント
- 弓道 日置流の特徴や小笠原流との違い
- 日置流の射法の基本動作と実戦的な技術
- 足踏みや胴づくりなど射を安定させる要素
- 斜面打ち起こしや引き分けなどの射法のポイント
弓道の日置流の特徴と射法の基本
弓道 弓術 日置流 印西派 Kyudo Kyujyutsu Hekiryu Insaihaから引用
- 小笠原流の違いとは
- 特徴と実戦的な射法
- 足踏みの重要性と三つの準
- 胴づくりの基本と姿勢の安定
- 弓構えと狙いを定める方法
- 打ち起こしのやり方とポイント
小笠原流の違いとは
弓道には複数の流派が存在しますが、その中でも特に歴史が深く、現代にまで影響を与えているのが「日置流(へきりゅう)」と「小笠原流(おがさわらりゅう)」です。この二つの流派は、弓の技術や射法の目的に大きな違いがあり、それぞれ独自の発展を遂げてきました。ここでは、日置流と小笠原流の違いについて詳しく解説します。
まず、小笠原流は「礼法弓術」とも呼ばれるように、弓道の技術だけでなく、礼儀作法を重視している点が特徴です。鎌倉時代に小笠原長清が創始し、以降、武家の公式な弓術として発展しました。特に、戦国時代から江戸時代にかけては将軍家や大名家に仕える弓術の流派として位置づけられ、儀礼や作法を極めた美しい射を大切にしてきました。そのため、現在の弓道においても「礼は小笠原、射は日置」と言われるほど、所作の美しさを重視する流派として知られています。
一方、日置流はより実戦的な弓術を追求した流派です。室町時代から戦国時代にかけて日置弾正政次が体系化し、戦場での実用性を考えた射法が確立されました。日置流の射法では、矢の威力や貫通力、迅速な射を重視し、実戦で敵を射抜くことを目的としていたため、動作の合理性が求められました。このため、小笠原流のように所作の美しさよりも、いかに速く、強く矢を放つかが重要視されてきたのです。
また、射法の違いとして「弓構え」と「打ち起こし」の方法にも大きな違いがあります。小笠原流では、弓を正面に打ち起こす「正面打ち起こし」が基本とされており、身体の中心軸を保ちつつ、見た目の美しさにも配慮した射法を採用しています。一方、日置流では「斜面打ち起こし」と呼ばれる方法を用い、弓を斜めに構えながら素早く打ち起こすことで、より合理的で力強い射を実現しています。
こうした違いから、現代の弓道では小笠原流が礼法弓道の代表として多くの流派に影響を与え、公式行事や演武などで採用されています。一方、日置流は実戦的な技術を重視する射法として、射の精度や力強さを追求する人々に受け継がれています。どちらの流派も日本の弓道の発展に大きく貢献しており、それぞれの特徴を理解することで、弓道の奥深さをより一層感じることができるでしょう。
特徴と実戦的な射法
日置流は、他の弓道流派とは異なり、実戦を強く意識した射法を特徴としています。この流派は、戦国時代の戦場での戦闘を前提としており、迅速かつ正確に矢を放つことが求められました。そのため、日置流の射法にはいくつかの独自の要素があります。
まず、日置流の最大の特徴は「矢勢(やぜい)」を重視する点にあります。矢勢とは、矢の飛ぶ速度や貫通力のことを指します。日置流では、単に的に当てるだけでなく、強い矢を放ち、相手の防具を貫通させることを目的とした技術が発展しました。このため、射の際にはより力強く、鋭い矢を放つことが重要視されます。
また、射法の一環として「斜面打ち起こし」を採用している点も特徴的です。斜面打ち起こしとは、弓を斜めに構えながら打ち起こすことで、より速く、効率的に射を行うための技術です。一般的な正面打ち起こしと比較すると、肩への負担が少なく、素早く次の動作に移ることが可能になります。これにより、戦場などの実戦の場で迅速に矢を放つことができるのです。
さらに、日置流では「会」の時間を長く取ることを避ける傾向があります。これは、長く会を保つことで射の動作が遅くなり、実戦での素早い射に不向きになるためです。代わりに、短時間で「伸び合い」「詰め合い」といった動作を完成させ、最適なタイミングで矢を放つことが求められます。こうした射のスタイルは、現代の弓道においても的中率を向上させるための重要な技術となっています。
一方で、日置流の射法には注意点もあります。例えば、斜面打ち起こしを行う際には、弓手と馬手(右手)のバランスが重要であり、適切な力加減を誤ると矢が狙った方向に飛ばなくなることがあります。また、強い矢勢を求めるあまり、無理に力を込めると射の安定性を損なう可能性もあるため、適切な体の使い方を習得することが必要です。
このように、日置流の射法は実戦的でありながらも、合理的かつ効率的な射を追求した流派であることが分かります。現代の弓道においても、その技術は多くの射手に影響を与えており、より精度の高い射を目指す人々にとって有益な学びとなるでしょう。
足踏みの重要性と三つの準
日置流の射法において、足踏みは非常に重要な要素の一つです。足踏みが正しくできていないと、射の安定性が失われ、狙いが定まらなくなるため、弓道を学ぶ上で最初に意識すべき基本動作となります。特に、日置流では足踏みの正確性を高めるために「三つの準(じゅん)」と呼ばれる考え方が用いられています。
足踏みの目的は、的に対して正しく立ち、射の際の体の安定性を確保することにあります。日置流では、足踏みの際に「中墨の準」「矢束の準」「扇子の準」の三つの要素を考慮することが求められます。
まず、「中墨の準」とは、射手の体の中心と的の中心を一直線上に揃えることを指します。具体的には、仮想の線を引き、その上に左足のつま先を置き、右足もその延長線上に配置することで、正しい立ち位置を確保します。
次に、「矢束の準」は、両足の間隔を決める基準です。日置流では、この間隔を射手の身長の約半分とし、安定した射を行うための基盤としています。
最後に、「扇子の準」は、両足の角度を決める基準です。適切な足の角度は60~80度とされており、個々の体格に応じて微調整が必要です。
これらの準を意識することで、弓道の基本姿勢が整い、より正確な射を行うことができるようになります。
胴づくりの基本と姿勢の安定
弓道において「胴づくり」は、安定した射を行うために不可欠な要素です。胴づくりがしっかりできていないと、射の際に身体がぶれたり、矢が狙った場所に飛ばなくなるため、弓道の基本動作の一つとして重視されています。特に日置流では、姿勢を正しく保つために「袴腰の準(はかまごしのじゅん)」という考え方を用いて、安定した胴づくりを実現しています。
日置流の胴づくりでは、腰の位置を適切に保つことが重要です。袴の腰板を背中にしっかりとつけることで、姿勢の崩れを防ぎます。この方法は、禅の姿勢にも通じており、耳と肩が横から見たときに一直線になり、正面から見ると鼻と臍(へそ)が一直線上に並ぶことが理想とされています。この姿勢を保つことで、上半身の力みが取れ、自然と弓を引く動作が安定するのです。
また、胴づくりでは「腰」を意識することも重要です。日置流では、他の流派と異なり、「腹」や「肛門」といった部位よりも、袴の腰板を基準に姿勢を整えることが特徴です。これは、実戦の場面を想定した合理的な考え方に基づいており、戦場で瞬時に胴の安定性を確認するための方法として確立されました。袴の腰板が背中にぴったりとついているかを意識することで、前傾や後傾といった姿勢の乱れを即座に修正できるため、安定した射が可能となります。
胴づくりが正しくできていないと、射の際に体の重心がずれてしまい、矢が安定して飛ばない原因になります。特に、腰の位置が前に出すぎると矢が浮きやすく、逆に後ろに引きすぎると矢が低く飛ぶ傾向があります。そのため、射の前に必ず胴づくりの状態を確認し、腰の位置を意識することが重要です。
このように、日置流の胴づくりは、合理的かつ実戦的な考え方に基づいています。袴腰の準を意識し、常に姿勢を正しく保つことで、安定した射が可能になります。弓道を学ぶうえで、まずは胴づくりの基礎をしっかりと身につけることが、上達への第一歩となるでしょう。
弓構えと狙いを定める方法
弓構えは、弓道において射の準備段階にあたる重要な動作です。この段階で姿勢や弓の持ち方が正しくできていないと、その後の動作にも影響を及ぼし、狙いが定まらなくなるため、正しい弓構えを身につけることが大切です。日置流では、実戦を意識した射法を取り入れており、特に「懸け口十文字」と「紅葉重ねの手の内」という技術を重視しています。
まず、「懸け口十文字」とは、弓を持つ右手(馬手)の構え方に関する技術です。弦に指をかける際、拳の角度が適切でないと、弦を引く際に無駄な力がかかってしまい、安定した射が難しくなります。懸け口十文字では、弦と拳が直角になるように指をかけることで、無駄な力を入れずにスムーズに弦を引くことができます。この技術を身につけることで、狙いを定めた際の安定性が増し、より正確な射が可能になります。
次に、「紅葉重ねの手の内」とは、左手(弓手)の握り方の技術です。弓の握り方が不安定だと、矢を放つ際に弓がぶれてしまい、的を正確に狙うことができません。紅葉重ねの手の内では、弓を握る際に親指と人差し指の間に皮膚のしわを作り、その部分を弓に密着させることで、手の内が安定しやすくなります。さらに、小指や薬指を使って弓をしっかりと固定することで、矢の放たれる方向が安定し、狙いを正確に定めることができます。
また、狙いを定める際には「頭持ち(ずもち)」という考え方が重要になります。日置流では、的を見据える際の頭の位置を「目尻目頭の準」と呼ばれる方法で決めます。これは、右目の目頭と左目の目尻が的に向かうように視線を合わせる方法です。この方法を用いることで、首の筋肉に無理な負担をかけることなく、自然な形で的を見据えることができます。
このように、日置流の弓構えは、合理的かつ実戦的な技術を取り入れています。懸け口十文字や紅葉重ねの手の内を意識し、頭持ちを正しく行うことで、より精度の高い射を実現することができます。正しい弓構えを身につけることが、弓道の上達につながる重要なポイントとなるでしょう。
打ち起こしのやり方とポイント
打ち起こしは、弓構えから矢を引き始める最初の動作であり、正しく行うことでスムーズに引き分けへとつなげることができます。日置流では「斜面打ち起こし」と呼ばれる独自の方法を採用しており、合理的かつ効率的な打ち起こしを行うことが特徴です。
斜面打ち起こしとは、弓を構える際に弓手(左手)をやや左斜め前方に押し出しながら、馬手(右手)を内側にひねるようにして弦を引く方法です。この方法を用いることで、弓を持ち上げる動作がスムーズになり、肩や腕に無駄な力が入らず、次の動作に移行しやすくなります。また、弓を正面に構えるのではなく、斜めに打ち起こすことで、矢を放つ際の安定性が向上し、的中率が高まります。
打ち起こしの際に意識すべきポイントとして、まず「拳の高さ」が挙げられます。日置流の斜面打ち起こしでは、打ち起こしの段階で拳を肩の高さよりやや低めに保ちます。これにより、肩に余計な負担がかからず、スムーズな引き分けへと移行しやすくなります。逆に、拳を高く持ち上げすぎると、肩が緊張してしまい、引き分けがスムーズにできなくなるため注意が必要です。
さらに、打ち起こしの際には「力の使い方」にも注意が必要です。弓を持ち上げる際に、力を過度に入れると動作がぎこちなくなり、的中率が低下してしまいます。特に、弓手と馬手のバランスを意識し、左右均等の力で弓を持ち上げることが重要です。これにより、スムーズな引き分けが可能となり、最適な形で矢を放つことができます。
このように、日置流の打ち起こしは、効率的な動作を意識しながら行うことが重要です。斜面打ち起こしの特徴を理解し、正しい姿勢と力のバランスを意識することで、安定した射を実現することができるでしょう。
弓道の日置流の技術と射の理念
- 斜面打ち起こしとは
- 引き分けの技術と安定した動作
- 会と離れの関係と理想の形
- 射の理念と考え方
- 的中率を高めるための工夫
- 現代弓道における日置流の影響
斜面打ち起こしとは
日置流の射法において、「斜面打ち起こし」は重要な技術の一つです。一般的な弓道では、弓を正面に向けて持ち上げる「正面打ち起こし」が主流ですが、日置流では弓を斜めに持ち上げる独自の方法を採用しています。これは、戦場での実用性を考慮し、より速く、より安定した射を行うための工夫によるものです。
斜面打ち起こしの最大の特徴は、弓手(左手)を少し左斜め前方に押し出しながら、馬手(右手)は肘を固定し、手首を軽く内側にひねるようにして弦を引くことです。この方法を用いることで、弓のバランスを保ちつつ、力を効率的に伝えることができます。結果として、肩や腕に無駄な負担がかからず、矢の動きも滑らかになります。
さらに、斜面打ち起こしの利点の一つは、打ち起こしの速度を調整しやすいことです。弓を高く持ち上げる必要がないため、素早く引き分けの動作に移行することが可能になります。これは、戦場において迅速に次の射に移る必要があった日置流の背景を反映しています。
しかし、斜面打ち起こしには注意点もあります。一つは、弓手と馬手の力のバランスです。弓手の動きが強すぎると弓が斜めに傾きすぎてしまい、狙いが不安定になります。一方で、馬手に力を入れすぎると、弦の引き方が不均等になり、離れの際に矢の飛び方に影響を及ぼします。理想的な打ち起こしを行うためには、両手の力を均等に保ち、安定した動作を心がけることが重要です。
このように、日置流の斜面打ち起こしは、戦場の実用性を意識した合理的な射法です。弓手と馬手のバランスを意識しながら、無駄のない動作を追求することで、正確で力強い射を実現することができます。
引き分けの技術と安定した動作
引き分けは、弓道の射法において非常に重要な動作の一つです。特に日置流では、正確な矢勢を生み出すために、安定した引き分けを行うことが求められます。引き分けが適切にできていないと、矢の軌道が乱れたり、力が分散してしまうため、的中率が低下してしまいます。
日置流の引き分けでは、弓手(左手)と馬手(右手)を均等に動かしながら、滑らかに矢を引いていくことが基本とされています。特に意識すべきポイントは、「弦道(げんどう)」の確保です。弦道とは、弦が通るべき正しい軌道のことで、これが乱れると矢が安定して飛びません。正しい弦道を確保するためには、肩や肘の位置を意識しながら、弓手をしっかりと的方向に押し出しつつ、馬手をスムーズに引くことが求められます。
また、日置流の引き分けでは「三分の二」の動作が重要とされています。これは、打ち起こしから引き分けに移行する際の中間地点を指し、ここでしっかりと狙いを定めながら、力のバランスを整えることがポイントとなります。三分の二の段階で弓手と馬手の位置関係を確認し、肩が上がっていないか、弦道が適切かをチェックすることで、安定した引き分けを行うことができます。
引き分けの動作では、特に「力の分配」が重要になります。弓を引く際に、馬手側にだけ力が入ってしまうと、矢が極端に右に飛んでしまう原因となります。逆に弓手だけを強く押し出すと、矢の軌道が不安定になり、狙いがずれてしまいます。そのため、引き分けの際は、両手が均等に力を使い、矢が真っ直ぐに引かれるように意識することが重要です。
このように、引き分けは単純な動作のように見えて、実は非常に奥深い技術が求められます。弦道を意識し、三分の二で力のバランスを調整することで、より正確な射を実現することができるでしょう。
会と離れの関係と理想の形
弓道における「会(かい)」と「離れ(はなれ)」は、射の最終段階を構成する重要な要素です。日置流では、会と離れの質が矢の威力や的中率に直結すると考えられており、特に「詰め合い」と「伸び合い」を意識することが重視されています。
会とは、引き分けの最終段階で矢を最大限に引いた状態のことを指します。このとき、弓手と馬手は均等な力で押し引きを続け、身体全体が安定した状態を保つことが求められます。日置流では、会の段階で過剰に時間をかけることを避け、できるだけ速やかに最適なタイミングで離れに移ることが推奨されています。これは、戦場で迅速な射が求められた背景によるものです。
また、会の際には「詰め合い」と「伸び合い」が重要な要素となります。詰め合いとは、弓手と馬手の力を均等に加えることで、弓の張力を最大限に引き出す技術です。一方、伸び合いとは、会の状態からさらに弓を押し引きし、矢に最大限のエネルギーを蓄える動作を指します。この二つの動作が適切に行われることで、強い矢勢を生み出し、より遠くへ飛ぶ矢を放つことが可能になります。
離れとは、弓を引いた状態から矢を放つ瞬間のことを指します。日置流では、離れの際に「角見(つのみ)」を効かせることが重要視されています。角見とは、弓手の親指の根元を利用して弓を正しく押し出す技術であり、これが適切に機能すると、矢が真っ直ぐに飛び、的中率が向上します。逆に角見がうまく働いていないと、矢が左右にぶれたり、飛距離が落ちる原因となります。
日置流では、会から離れに移る際に、できるだけ無駄な動作を排除し、スムーズに矢を放つことが理想とされています。長く会を維持することが目的ではなく、最大限の力を発揮できるタイミングで的確に離れを行うことが求められます。
このように、会と離れは単なる動作ではなく、弓道の精度を左右する重要な技術です。詰め合いと伸び合いを意識し、正しい角見の働きを身につけることで、日置流の理想的な射を実現することができるでしょう。
射の理念と考え方
日置流は、実戦的な弓術を追求した流派であり、その射の理念や考え方は他の流派とは異なる独自の特徴を持っています。特に、戦場での活用を前提とした射法が体系化されていることが、日置流の大きな特徴といえます。ここでは、日置流の射の理念と、その根底にある考え方について解説します。
日置流の射の理念は、単なる的中を目的とするのではなく、「矢勢(やぜい)」を最大限に引き出し、威力のある矢を放つことを重視しています。これは、戦場において敵の防具を貫通するだけの強さを持つ射を求めた結果であり、単なる技術の習得ではなく、実際の戦闘で通用する射を磨くことを目的としています。そのため、日置流では「会(かい)」を長くとることを推奨せず、素早く「やごろ(矢を放つ寸前の瞬間)」に達し、確実に矢を放つことが求められます。これにより、時間をかけずに次の射に移ることができ、戦場での連続射撃が可能となるのです。
また、日置流では「雑念を持たずに射る」ことが重要視されています。他流派では、射の精神的な部分を重視し、心を統一することに重点を置くことが多いですが、日置流では射の準備段階で既に心を整えておくことが理想とされています。つまり、弓を構えた時点で心を無にし、射に集中することで、射の動作をスムーズに行えるようにするのです。この考え方は、現代弓道においても「射即生活」という言葉に通じる部分があり、精神的な統一を射の流れの中で自然に形成することが求められます。
さらに、日置流では「四つの弓構え」が存在し、それぞれの状況に応じて弓の構え方を変えることができるようになっています。これもまた、戦場での実用性を考えた結果であり、固定された射法ではなく、変化する状況に適応できる柔軟な技術を身につけることが目的とされています。
このように、日置流の射の理念は、単に弓道の技術を磨くだけではなく、実戦的な視点から合理的な射を追求することにあります。力強く、素早く、無駄のない射を身につけることが、日置流の射法の根本にある考え方といえるでしょう。
的中率を高めるための工夫
弓道において、的中率を高めることはすべての射手にとって重要な課題です。日置流では、単に矢を的に当てることだけではなく、「威力のある矢を確実に狙った場所へ飛ばす」ことを重視しています。そのため、的中率を向上させるための独自の工夫がいくつも存在します。
まず、日置流では「足踏み」の段階で的中率を向上させるための基盤を作ります。足踏みの際に「三つの準(じゅん)」と呼ばれる基準を活用することで、射手の体のバランスを最適化し、狙いの精度を高めます。「中墨の準(なかずみのじゅん)」で正しい位置に立ち、「矢束の準(やづかのじゅん)」で適切な足の幅を確保し、「扇子の準(せんすのじゅん)」で足の角度を調整することで、射の安定性が向上し、より正確に矢を放つことができるのです。
次に、日置流では「紅葉重ねの手の内」を用いることで、弓の安定性を高めています。手の内が正しく機能していないと、矢の飛び方が不安定になり、的を外しやすくなります。紅葉重ねの手の内では、親指と人差し指の間に皮膚のしわを作り、弓を適切に握ることで、矢の軌道を安定させます。さらに、小指と薬指を使って弓をしっかりと固定することで、弦の返りをスムーズにし、正確な射を実現することができます。
また、狙いを定める際には「目尻目頭の準」という方法を活用します。これは、右目の目頭と左目の目尻を的に向けることで、自然な視線の位置を確保し、無理のない狙い方を実現する方法です。この視線の使い方を意識することで、的の中心を的確に捉え、狙いを安定させることが可能となります。
これらの工夫を実践することで、日置流の射法では的中率を高めることができます。単に矢を放つのではなく、射の各段階で細かい調整を行うことで、より精度の高い射を実現できるのです。
現代弓道における日置流の影響
日置流は、戦国時代から続く実戦的な弓術として発展しましたが、その技術や考え方は現代弓道にも大きな影響を与えています。弓道の流派は多岐にわたりますが、日置流はその中でも特に射の合理性を追求しており、現在の弓道の技術体系の基盤となっています。
まず、現代弓道における「足踏み」や「胴づくり」の技術は、日置流の影響を色濃く受けています。日置流では、足踏みを「三つの準」によって明確に定義し、正しい姿勢を維持することが重要視されていました。この考え方は、現在の弓道の基本動作にも受け継がれており、特に初心者が学ぶ際の基礎となっています。
また、「弓構え」や「打ち起こし」に関する技術も、日置流の影響を受けています。日置流では、斜面打ち起こしを用いることで、効率的な射を行う方法を確立しました。現代弓道では正面打ち起こしが一般的ですが、競技の中で射のスピードを向上させるために、日置流の斜面打ち起こしの考え方を取り入れる射手も増えています。
さらに、日置流の「矢勢」を重視する考え方は、競技弓道においても重要な要素となっています。矢の勢いが強ければ、それだけ遠くの的にも届きやすく、精度の高い射が可能になります。そのため、現代弓道の競技者の中には、日置流の射法を参考にしながら、自身の射を改善する人も少なくありません。
このように、日置流の技術や考え方は、現代弓道においても重要な役割を果たしています。伝統的な弓道の技術を学ぶ中で、日置流の合理的な射法を理解することは、弓道の上達にもつながる重要な要素となるでしょう。
弓道の日置流の射法と特徴の総まとめ
- 日置流は戦場での実戦を前提に発展した流派であり、速射性と矢勢を重視している
- 小笠原流は礼法や所作の美しさを重視するのに対し、日置流は実用性と合理性を追求している
- 矢勢を高めることを最優先とし、矢が速く遠くへ飛ぶようにするための射法が確立されている
- 弓を斜めに持ち上げる「斜面打ち起こし」を採用し、素早く次の動作に移る工夫がされている
- 会を長く取らず、最大限に力を発揮できる「やごろ」の瞬間に矢を放つことを重視している
- 足踏みでは「中墨の準」「矢束の準」「扇子の準」の三つの基準を守り、安定した姿勢を作る
- 胴づくりは「袴腰の準」を活用し、腰の位置を基準にして姿勢の崩れを防ぐことが重要視されている
- 弓構えでは「紅葉重ねの手の内」を習得し、手の内の正しい形を維持することで射の精度を高める
- 狙いを定める際には「目尻目頭の準」を活用し、首に負担をかけずに自然な視線で的を見ることが大切
- 引き分けでは「三分の二」の動作を意識し、弦道を正しく維持しながら矢を安定して引く技術が求められる
- 離れの際には「角見」の働きを正しく活かし、弓をしっかりと押し出すことで矢の直進性を確保する
- 的中率を高めるために、足踏み、弓構え、引き分け、離れの各動作を合理的に最適化することが重要
- 現代弓道の基礎にも日置流の技術が活かされており、多くの射法に影響を与えている
- 戦場での実戦向けに開発された射法でありながら、競技弓道においても高い的中率を求める射手に活用されている
- 無駄な動作を省き、合理的な力の使い方を重視する日置流の技術は、効率的で安定した射を実現するための理論として評価されている
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