弓道の弓の長さの基本と選び方

• 弓道の弓の長さはどれくらいですか？
• 引き尺と身長の測り方
• 並寸と伸寸の選び方
• 弓の並の長さは何センチですか？
• 弓の2寸伸びの長さは？

弓道の弓の長さはどれくらいですか？

弓の標準寸法を理解すると、以降の選定と安全管理が一段と明確になります。一般的な基準は七尺三寸、すなわち約221cmで、この長さが「並寸」と呼ばれる中心的なリファレンスです。伝統的な度量衡（尺・寸）に基づく呼称は、実寸の目安に直結しており、三寸詰（およそ－9cm）、二寸伸（およそ＋6cm）、三寸伸（およそ＋9cm）、四寸伸（およそ＋12cm）といった派生サイズが体系的に整理されています。これらの短長は、体格や引き尺、そして競技・稽古の場面で求められる安定性や安全性を踏まえた調整幅として広く運用されています。

弓は一体成形の単純な棒ではなく、握りの位置や上下非対称の形状、張力の立ち上がり方（引き始めから会に至るまでの荷重変化）など、多くの設計要素が織り込まれています。そのため、同じ表示の弓力や同じ公称長でも、素材構成や成り（形状カーブ）、製法の違いで「体感の強さ」や「戻りの速さ」が異なることがあります。長さの選定は、単純な身長換算ではなく、矢束（喉の中心から左手中指先までの距離を基準とする測定値）と現在の引き尺が第一の判断材料になります。

公的団体の案内では、並寸221cmを基準として、射手の体格や競技形式に応じた短長の許容が示されているとされています。標準を理解したうえで、実測値と安全余裕（矢の長さや離れ時の余白）、矢の飛行安定（羽根のクリアランスや筈の掛かりの適合）を総合的に確認することが推奨されます。練習初期やフォーム調整中の段階では、強引に長い矢束を狙うのではなく、現状の再現性と安全性を優先するのが一般的です。

標準寸法に関する一次情報は、公的団体の公開ページで確認できます（出典：全日本弓道連盟 道具について）。

引き尺と身長の測り方

正確なサイズ選定の要は、引き尺と矢束の客観的な測定です。測定の誤差は弓と矢の組み合わせ全体に影響し、短すぎる矢は安全リスク、長すぎる矢は重量増や重心ズレによる飛行特性の変化につながります。測る際は、環境・姿勢・回数の三点を整えることが推奨されます。環境は足場が水平で十分なスペースがあること、姿勢は正面で胸を開き、肩のラインが床と平行、骨盤が前後傾し過ぎないこと、回数は最低でも2〜3回の繰り返し測定と平均化が基本です。

矢束は、喉の中心（頸窩のほぼ中央）から、両腕を水平に広げた状態で左手中指先端までの直線距離をメジャーで測る方法が一般的です。スケールは柔らかい布製メジャーよりも伸びの少ないスチールメジャーが適しています。肩の挙上や胸郭の過度な前突は、実際の射で再現しにくい値を生むため、測定時は自然な呼吸と静止での保持を心がけます。測定者が別にいる場合、喉中心と指先の位置決めを第三者が確認することで、数センチ単位のブレを抑えられます。

身長は参考値として扱います。身長と腕展（両手を広げた指先間距離）が近似する統計的傾向が知られますが、胸郭の厚み、肩関節の可動域、前腕と上腕の比率、手の内（親指・人差し指の角度と捻りの作り）といった要素が引き尺に影響します。したがって、身長だけで弓の長さを決めるのは合理的ではありません。測定後の値は、実際の素引き・巻藁での引き込み量、弦と胸の位置関係、会での安定（左右の肩の高さ、肘線の通り）と合わせて評価します。

計測ステップ

①計測姿勢の準備（正面・水平・自然呼吸）→ ②喉中心から左手中指先までをメジャーで計測 → ③2〜3回繰り返し平均値を採用 → ④素引き・巻藁での引き込みと接触点（胸弦位置・筈の掛かり）を確認 → ⑤安全余裕を考慮して矢長・弓長の候補を絞る。計測と実射の突合せが、数字の「使える精度」を担保します。

並寸と伸寸の選び方

並寸か伸寸かの判断は、実測した矢束と、会での安定余裕の2点が土台です。おおまかな目安として、矢束が85cm前後で並寸、90cm前後で二寸伸、95cm前後で三寸伸、100cm前後で四寸伸を検討する整理が広く用いられてきました。ただし、これは「出発点」にすぎません。たとえば、同じ矢束でも肩甲骨の可動域が大きい人は伸寸のたっぷり感を活かせる一方、肩が上がりやすい人は長すぎる弓でフォームが乱れやすくなることがあります。重要なのは、候補長で素引き・巻藁・的前の順に確認し、会の静止と離れの再現性が保てるかを段階的にチェックすることです。

装備全体としては、弓長だけでなく、弓力（表示kg）、弦の種類と太さ、矢のスパイン（曲げ剛性）や総重量、羽根の高さ・長さ、筈のサイズ適合など、相互作用のあるパラメータが影響します。たとえば、同じ弓力表示でも伸寸は実効てこの関係で体感が変わることがあり、並寸よりも伸寸の方が会での安定感を得られるという意見と、伸寸は弓手負担が増えやすいという意見が併存します。どちらが「正しい」ではなく、射型と目的（稽古の量、試合の頻度、的中率の安定 vs. 矢勢の追求）に応じて最適点が変わる、と理解するのが現実的です。

実務的な選定プロセスとしては、①矢束の実測、②候補長の素引きチェック（胸弦位置・肘線・弓手の押しの通り）、③巻藁での会の保持時間と離れの整合、④的前でのグルーピングの変化、⑤疲労時の再現性という順で評価します。いずれかの段階で負荷過多やフォーム崩れが観察される場合は、一段階短い長さや弓力の見直し、弦や矢の組み合わせ調整を先に行う方法も有効です。射癖（先手の握りの強さ、捻り込みの癖、妻手のゆるみなど）がある場合は、長さを安直に延ばすより、癖に対する矯正プランと併行して検討するとリスクを抑えられます。

弓の並の長さは何センチですか？

並寸は弓の標準的な基準長として扱われ、約221cm（七尺三寸）に相当します。これは体系の中心値であり、短い三寸詰や長い各伸寸を評価する際の出発点として機能します。並寸が基準とされる理由は、歴史的な運用実績に加えて、握り位置や上下非対称の設計、引き始めから会（かい）に至るまでの張力の立ち上がり方が、一般的な体格での再現性と安定性を得やすいバランスに収まるためと説明されます。特に、矢束が85cm前後の層では、並寸で会のたっぷり感と離れ後の姿勢維持を両立しやすいという整理が示されることが多く、初心段階のサイズ合わせにも採用されやすい長さです。

もっとも、並寸が最良というわけではなく、引き尺・矢束・肩甲帯の可動性・胸郭の厚み・手の内といった個体差の影響は無視できません。同じ221cmでも素材や製法により体感は変わり、竹弓のしなりの大きさや、グラス・カーボンの復元特性の違いで、離れの鋭さや必要な押手のコントロール量が異なることが知られています。したがって、並寸を「基準」としながらも、素引き→巻藁→的前の順で安定検証を進め、胸弦の位置、肘線、肩の高さ、頸部の緊張などを客観的に確認することが重要です。

並寸を検討する目安

選定段階では、過度に長い弓に切り替えるより、並寸での再現性と安全余裕の確保を優先するアプローチが紹介されます。並寸で矢長に十分な余白を確保でき、会が窮屈に感じられない場合は、まずは射型の安定化と弓力の最適化（表示kg、弦の太さや素材、矢のスパインの見直し）を先行させる判断が合理的です。公的団体の案内でも、弓の長さの基準値として221cmが提示され、体格や競技に応じた短長の許容が説明されています（出典：全日本弓道連盟 道具について）。

弓の2寸伸びの長さは？

二寸伸は呼称の通り、基準の並寸から二寸（約6cm）長い設計で、実寸目安は約227cm（七尺五寸）です。実務上は、矢束が90cm前後の射手が検討することが多いと整理されます。二寸伸の特徴は、会でのたっぷり感と姿勢の安定を得やすい一方、弓手の押しに必要なコントロール量がやや増える傾向が指摘される点にあります。これにより、離れ時の矢勢は保持しつつも、離れ直後の姿勢が崩れないか、押手の抜けや捻り込み過多が出ないかを重点的に点検する必要があります。

同一の弓力表示で並寸と二寸伸を比較した場合、てこの関係や成りの違いから、体感の強さや張力の立ち上がりが変化し、実効的な負荷バランスに差が出ることがあります。二寸伸で会の安定が向上する射手もいれば、押手側の負担が増して手の内が崩れやすくなる射手もいます。したがって、候補の長さを即断で決めるのではなく、素引き・巻藁・的前の各段階でチェックリストを充てるのが安全です。

二寸伸を前提とした矢の選択では、筈のサイズ適合（弦溝のはまり具合）や矢のスパイン（曲げ剛性）の再評価が要点になります。弓長が伸びると離れの挙動が変化し、同じスパインでも的中のまとまりが変わるケースがあるためです。羽根高さや長さも、矢飛び・失速・クリアランスに影響する要素として併せて確認します。二寸伸を安定運用できれば、会の安定と的中の再現性を両立しやすく、長い矢束を活かしたフォームづくりの基盤になり得ますが、負荷の兆候が見えた場合は長さ・弓力・弦・矢のいずれかの調整で早期に微修正するのが無難です。

弓矢の長さは？

矢の長さは、安全余裕と再現性の観点から設定します。広く共有されている基準では、矢束（喉中心から左手中指先までの距離）より5cm以上長い矢を選択するのが推奨され、初心段階やフォーム調整期には＋10cm程度の余裕を持たせる例が紹介されます。これは、実射中の姿勢変化や呼吸、衣服の厚み、筈の掛かりの個体差などにより、会の位置が数センチ単位で変動し得るためです。短すぎる矢は、離れ直前の引き足らずや、的前での安全上のリスクに直結するため避けられます。

矢長設定では、単なる加算方式だけでなく、矢の総重量と前後バランス（FOC：重心前出し率）の観点も重要です。長くすれば自然と重くなり、また矢尻の質量選択によって前方重心が強くなります。FOCは一般に適正範囲があるとされ、過度な前出しは失速を招き、逆に不足すると飛行安定が崩れやすいと説明されます。実務では、現在の弓力・弦・離れ特性との整合を確かめつつ、グルーピングのまとまりと的中の再現性で最終判断を下します。

矢長と関連パラメータの見直しポイント

安全面では、的前での短い矢や羽根欠損矢の使用禁止など、基礎的なルールが強調されます。これは、射場全体の安全性に関わる事項であり、矢の点検・整備を定常化する運用が推奨されます。実射では、素引き・巻藁での引き込みと胸弦位置、会の保持時間、離れのタイミングを安定化させ、その上で矢長・スパイン・矢尻質量を調整すると、数値が「結果」に反映されやすくなります。素材別（竹・ジュラルミン・カーボン）の選択は、耐久性・価格・挙動の好みといった要素の総合判断であり、長さの適合を満たした上での二次的最適化と捉えるのが安全です。

矢束と弓の長さの関係

弓道において弓の長さを決定する最も重要な要素の一つが矢束（やづか）です。矢束とは、正しい姿勢を取り喉の中心から左手中指先までを測定した距離を指し、実際に引く際の引き尺の目安となります。矢束が短い場合は短い弓で十分に対応できますが、矢束が長い射手が並寸の弓を使用すると、会の段階で弦が頬を越え矢が的前に対して危険な位置に達してしまうリスクが生じます。このため、矢束と弓の長さには必ず対応関係が必要であると整理されています。

例えば、矢束が85cm前後であれば並寸（約221cm）で安定することが多く、矢束が90cm近くであれば二寸伸（約227cm）が推奨される傾向にあります。さらに矢束が95cmを超える場合は三寸伸や四寸伸といったより長い弓を選択する例も紹介されています。こうした数値はあくまで目安であり、実際には射型や姿勢、肩の可動域、胸郭の厚みといった身体的特徴も影響します。

注意点として、矢束と弓長の対応は固定的ではなく、射手の習熟度によって変わり得る点が挙げられます。初心者はまだ射型が安定していないため、やや余裕のある長さを選んだ方が安全性が高い場合があります。一方で熟練者は、より正確に矢束に対応した弓を選ぶことで射の精度を高めることができます。公式サイトでも「矢束に応じた適切な長さの選択」が強調されています（参照：全日本弓道連盟）。

竹弓とグラス弓の違い

弓の長さを検討する際に見落とされがちなのが素材の違いです。竹弓は伝統的な弓で、湿度や温度といった環境要因に大きく左右されます。例えば、梅雨時には湿気を含んで柔らかくなり、乾燥期には硬さが増すなど、季節ごとの管理が不可欠です。その一方で、竹独自のしなりや弾力は、射に独特の深みと味わいを与えるため、多くの射手に根強く支持されています。

これに対し、グラスファイバーやカーボンを用いた弓は、環境の影響を受けにくく、耐久性と再現性に優れています。特に練習量が多い学生や競技者にとっては、毎回同じ感覚で射ができる安定性が大きなメリットとなります。価格帯も竹弓に比べて安定しており、入門用として普及しています。

素材の違いは、単に「扱いやすさ」の問題ではなく、弓長との組み合わせで射型に与える影響も変わります。例えば竹弓の二寸伸とグラス弓の二寸伸では、同じ227cmでも体感は異なる可能性があります。そのため、購入前には試射を行い、射手の体格や射型に合っているかを確認することが望まれます。これは専門店や連盟の公式ページでも推奨されています。

弓が乗る小さい車

遠征や試合に参加する際、弓をどのように車で運ぶかは重要な実務的課題です。並寸や二寸伸の弓であれば全長が221〜227cmとなり、軽自動車やコンパクトカーに積み込めるかどうかが気になる読者も少なくありません。実際には、斜めに配置することで車内に収まる場合が多いとされます。ただし、最も重視すべきは安全性と固定であり、JAF（日本自動車連盟）の公式サイトでも、長尺物の車内積載時には飛散防止のための固定措置が必須であると説明されています（参照：JAF公式サイト）。

また、道路交通法施行令では積載制限が規定されており、車体からはみ出す場合には警察署への申請が必要となるケースがあります。各都道府県警のサイトでは「制限外積載許可」に関する案内が公開されており、競技遠征でやむを得ず長尺物を運ぶ際には確認が推奨されています。弓を無理に押し込むと破損や事故のリスクが高まるため、弓袋や矢筒を活用し、固定具でしっかりと固定するのが望ましいとされています。

遠征先での安心・安全を確保するためには、積載ルールを確認し、弓を車に載せる前に緩みがないかをチェックする習慣を身につけることが大切です。

弓道の弓の長さのまとめ

ここまで解説してきた内容を整理すると、弓道における弓の長さ選びは単なる数字の比較ではなく、矢束や身長、素材特性、さらには運搬方法まで含めた総合的な判断が必要であることが分かります。最後に要点を整理したリストを提示しますので、弓の購入や選定、日常的な練習や遠征の参考にしてください。

• 弓の基準長は221cmが標準で短長の許容がある
• 長さは身長ではなく矢束の実測を基準に判断する
• 矢束は喉の中心から左手中指先までを測定する
• 矢は矢束より5cm以上長く初心者は+10cmが推奨される
• 並寸は約221cm二寸伸は約227cmが目安として扱われる
• 三寸詰や四寸伸などの長さも選択肢に含まれている
• 矢束が長い射手は伸寸系の弓を検討することが望ましい
• 素材ごとに竹弓とグラスやカーボンで特性が異なる
• 竹弓は湿度や保管環境に左右されやすく手入れが重要
• 合成素材弓は耐久性と再現性に優れ競技向きである
• 数値は目安であり指導者の助言を優先するのが安全
• 公式資料や専門店の寸法表で最新情報を確認する
• 遠征時の車内積載は弓袋や矢筒を活用し固定が必要
• 小型車でも斜めに置けば積載可能だが安全性を重視する
• 必要に応じて制限外積載許可の制度を確認すること

以上のポイントを押さえて選定や運用を進めれば、弓道 弓 長さに関する疑問を整理し、より安心かつ効率的に競技や稽古に取り組めるでしょう。